CO2削減も微生物で
4/2 海洋性光合成細菌による窒素・二酸化炭素固定化
脱炭素の取り組みとして、微生物を培養して、窒素・二酸化炭素固定化を行う方法もあります。
二酸化炭素固定化とは、生物がエネルギーを用いてCO2を同化する反応である。光合成生物や化学合成無機栄養生物ではカルビン-ベンソン回路(還元的ペントースリン酸回路)でCO2の固定を行っている。ただ、ある種の嫌気性細菌では異なる方法でCO2を固定していて、すべての生物がカルビンベンソン回路を利用しているのではないことも知られています。
窒素は、窒素固定菌、根粒菌、光合成菌などの微生物が窒素固定を行うことができます。
島津製作所は、京都大学、京都大学発スタートアップのSymbiobe株式会社などとともに、令和3年度JST共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)「ゼロカーボンバイオ産業創出による資源循環拠点」事業に参画します。本事業では、大気中の二酸化炭素や窒素を固定する海洋性光合成細菌を活用して、温室効果ガスを削減しながら様々な製品や有用物質の生産を目指します。具体的にはバイオプラスチック、タンパク質などのバイオ高分子の生産や、その過程で生じる光合成代謝産物を利用した農業用窒素肥料、水産養殖用飼料の開発を進めます。
海洋性光合成細菌を利用して、効率的に二酸化炭素や窒素の固定を行い、生産物の原料をより多く合成するためには、大規模な培養が必要です。このたび本事業において、京都大学桂キャンパス内に海洋性光合成細菌培養デモンストレーションプラント(デモプラント)を設け、稼働を開始しました。これまでの実験では、培養容量の上限は1000Lでしたが、今回のデモプラントでは大容量(4000L)の培養に取り組みます。
Symbiobe株式会社は、京都大学大学院工学研究科の沼田圭司教授の研究成果を基に、2021年1月に設立されたベンチャー企業です。沼田教授はこれまでに、海洋分解性バイオプラスチック(ポリヒドロシキアルカン酸)の合成(Higuchi-Takeuchi et al,2016,2017)やタンパク質繊維(人工クモ糸)の合成(Foong et al,2020)に成功するなど、海洋性光合成細菌による様々なバイオ高分子の生産について成果をあげてきました。本事業では、「デモプラントにおける光合成細菌の培養条件最適化」と、「デモプラント稼働後の運転・モニタリング」を、京都大学による技術指導のもと担当します。
島津製作所は本事業において、デモプラントにおける二酸化炭素や窒素の固定化定量データの計測並びに収集プロセス構築を担当します。計測にあたっては、全有機体炭素計(TOC計)やガスクロマトグラフ(GC)などの分析機器を用いる予定です。当社は今後も海洋性光合成細菌培養の実証実験に協力し、CO2の削減、カーボンニュートラルの実現に貢献できるとおもわれます。
二酸化炭素固定プラント