生産者の直接販売サイトにぎわい
10/24 生産者の直接販売サイトにぎわい
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、消費者が生産者からインターネットでじかに食品を買う産直サイトが躍進しています。その代表格が、ビビッドガーデン(東京・港)が運営する「食べチョク」です。本社:東京都港区浜松町 従業員数:72人 資本金8億4200万円 社長は30才の若手の女性です。創業して5年目の会社です。登録生産者が急増しています。
活動内容:農家が、お店や消費者に直接農産物を販売できるプラットフォームの運営
同社はサービスをより多くの人に知ってもらうため、農産物の移動販売車の展開に乗り出した。
東京都葛飾区にあるマンションの敷地。1台の販売車を、子どもたちが珍しそうに取り囲んでいた。棚に並んでいるのは、色とりどりの農産物。野菜や果物を入れた箱には、生産者を写真つきで紹介する紙が貼ってあった。いわば「移動八百屋」だ。
ビビッドガーデンは移動型店舗の配車サービスを手がけるMellow(メロウ、東京・千代田)と組み、10月半ばからマンションの敷地や公園での試験販売に乗り出した。期間は3カ月。江東区や渋谷区、世田谷区など都内の各所に移動販売車を派遣し、生産者から直接仕入れた農産物を販売している。
今回の取り組みは、消費者が食べチョクの生産者から食材を買うときのハードルを下げるのが目的だ。産直サイトは送料を消費者が負担する仕組みなので、1品当たりの送料を抑えようとしてまとめ買いが多くなる。これに対し、移動販売車は送料が発生しないため、単品でも気軽に買うことができる。
珍しい食材をそろえることで、消費者を引きつけるための工夫もした。葛飾区の販売車には、ひょうたんのような見た目の「バターナッツカボチャ」や、内側の葉がオレンジ色の白菜などが並んでいた。スーパーなどの大量流通に乗りにくい食材を集めることのできる産直サイトの強みを生かした。
食べチョクはコロナ禍以降、存在感を大きく高めた。サイトに登録する消費者は2019年末から20年末にかけて43倍に急増し、21年に入ってからもなお増え続けている。送料も含めた取扱額は20年10月期に前年同期比で53倍に増え、21年10月期も同2.5倍を見込んでいる。
コロナ流行初期の20年3月に打った手が、飛躍のきっかけになった。休校やイベントの中止などを受け、売り先を失った生産者からSOSの声があがると「コロナでお困りの生産者さん」というコーナーをサイトに設置。幅広い食材を対象に、送料の一部を同社が負担する取り組みをスタートさせた。
政府による生産者支援が本格的に始まる前に着手したこの措置で、一躍注目を集めた後、同社はサービスの内容をさまざまに拡充してきた。
その一つが、20年7月に始めた「ご近所出品」だ。それまでは生産者が個別にしか出品できなかったが、生産者がグループをつくって出品することも可能にした。複数の生産者の食材をまとめることで消費者の送料負担を抑えられることに加え、このサービスにはもう一つ別の狙いもあった。
高齢のベテラン生産者の出品を後押しすることだ。本人はネットに不慣れでも、仲間の生産者がサポートすれば一緒に出品できるようになる。このサービスを広めるため、21年5月中旬から1カ月の期間限定で、代金の一部を同社が負担する「ご近所出品フェア」を実施した。
背景には、より多くの生産者に参加してもらうことで1次産業を元気にしたいとの思いがある。秋元里奈社長は「食べチョクに登録している生産者の多くは若手だが、日本の農家のほとんどは年齢がもっと上。高齢の農家でも参加しやすい仕組みにすることで、次の世代への栽培技術の伝承を応援したい」と語る。
一連の取り組みの成果で、登録生産者はコロナ前の8倍強の5700軒に達した。移動販売車は、そうして集まった生産者を消費者につなぐためのさらなる一手だ。ふだんは買わないような珍しい野菜や果物を購入した人が、食べチョクのリピーターになることを期待する。そこで販売のノウハウを積み、いずれ実店舗を出すことも視野に入れている。
秋元氏は「コロナで産直サイトを取り巻く環境は大きく変わった。一部の人だけではなく、普通の家庭でも当たり前の選択肢に入るようになった」と語る。その裾野をもっと広げるため、新たな戦略を練り続ける。
東京都葛飾区にあるマンションの敷地。1台の販売車を、子どもたちが珍しそうに取り囲んでいた。棚に並んでいるのは、色とりどりの農産物。野菜や果物を入れた箱には、生産者を写真つきで紹介する紙が貼ってあった。いわば「移動八百屋」だ。
ビビッドガーデンは移動型店舗の配車サービスを手がけるMellow(メロウ、東京・千代田)と組み、10月半ばからマンションの敷地や公園での試験販売に乗り出した。期間は3カ月。江東区や渋谷区、世田谷区など都内の各所に移動販売車を派遣し、生産者から直接仕入れた農産物を販売している。
今回の取り組みは、消費者が食べチョクの生産者から食材を買うときのハードルを下げるのが目的だ。産直サイトは送料を消費者が負担する仕組みなので、1品当たりの送料を抑えようとしてまとめ買いが多くなる。これに対し、移動販売車は送料が発生しないため、単品でも気軽に買うことができる。
珍しい食材をそろえることで、消費者を引きつけるための工夫もした。葛飾区の販売車には、ひょうたんのような見た目の「バターナッツカボチャ」や、内側の葉がオレンジ色の白菜などが並んでいた。スーパーなどの大量流通に乗りにくい食材を集めることのできる産直サイトの強みを生かした。
食べチョクはコロナ禍以降、存在感を大きく高めた。サイトに登録する消費者は2019年末から20年末にかけて43倍に急増し、21年に入ってからもなお増え続けている。送料も含めた取扱額は20年10月期に前年同期比で53倍に増え、21年10月期も同2.5倍を見込んでいる。
コロナ流行初期の20年3月に打った手が、飛躍のきっかけになった。休校やイベントの中止などを受け、売り先を失った生産者からSOSの声があがると「コロナでお困りの生産者さん」というコーナーをサイトに設置。幅広い食材を対象に、送料の一部を同社が負担する取り組みをスタートさせた。
政府による生産者支援が本格的に始まる前に着手したこの措置で、一躍注目を集めた後、同社はサービスの内容をさまざまに拡充してきた。
その一つが、20年7月に始めた「ご近所出品」だ。それまでは生産者が個別にしか出品できなかったが、生産者がグループをつくって出品することも可能にした。複数の生産者の食材をまとめることで消費者の送料負担を抑えられることに加え、このサービスにはもう一つ別の狙いもあった。
高齢のベテラン生産者の出品を後押しすることだ。本人はネットに不慣れでも、仲間の生産者がサポートすれば一緒に出品できるようになる。このサービスを広めるため、21年5月中旬から1カ月の期間限定で、代金の一部を同社が負担する「ご近所出品フェア」を実施した。
背景には、より多くの生産者に参加してもらうことで1次産業を元気にしたいとの思いがある。秋元里奈社長は「食べチョクに登録している生産者の多くは若手だが、日本の農家のほとんどは年齢がもっと上。高齢の農家でも参加しやすい仕組みにすることで、次の世代への栽培技術の伝承を応援したい」と語る。
一連の取り組みの成果で、登録生産者はコロナ前の8倍強の5700軒に達した。移動販売車は、そうして集まった生産者を消費者につなぐためのさらなる一手だ。ふだんは買わないような珍しい野菜や果物を購入した人が、食べチョクのリピーターになることを期待する。そこで販売のノウハウを積み、いずれ実店舗を出すことも視野に入れている。
秋元氏は「コロナで産直サイトを取り巻く環境は大きく変わった。一部の人だけではなく、普通の家庭でも当たり前の選択肢に入るようになった」と語る。その裾野をもっと広げるため、新たな戦略を練り続ける。