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あぶない農業と儲かる農業

有機農業推進の背景

2021/06/08
農業技術 0
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化学肥料や農薬を使わない有機農業が注目を集めます。農林水産省が有機農業を推進する方針を打ち出したようです。その背景は何でしょう?

●農水省が農業推進に舵をきりました。今年になって、関連の報道が多くなってきました。2050年25%が目標ですが、普及には困難が予想されます。


 「農水省が有機農業の推進に力を入れ始めたそうですね」
 有機農業に対し、農薬や化学肥料を使って作物を育てることを「慣行農業」と呼びます。日本ではほとんどの農家が慣行農業を行っています。そのほうが効率的で収穫量も多いからです。農水省も慣行農業を念頭に置いて農業政策を進めてきました。
 ところが5月に決めた「みどりの食料システム戦略」で、2050年までに有機農業が農地に占める比率を25%に高める目標を掲げました。現状は1%未満です。
 「みどりの戦略」は環境に配慮し、持続可能な農業を実現するのが目的です。化石燃料を使わない栽培施設や農業機械の開発、農薬の使用量の削減など多くの目標を打ち出しましたが、中でも大胆なのが有機農業の推進。抜本的な政策転換と言えます。
 阪上さん「なぜ農水省は方針を転換したのですか」
 国連の定めたSDGs(持続可能な開発目標)が象徴するように、世界では環境配慮型の産業への移行が大きなうねりになっています。
 農薬は病害虫や雑草の発生を防いでくれる半面、生物の多様性を損なう恐れがあります。化学肥料の一部は製造時に化石燃料を必要とするため、温暖化ガスの排出抑制という目標と矛盾します。
 こうした中で、国際的な主導権を握ろうと動き出したのが欧州連合(EU)です。30年に有機農業の比率を25%に高めるという目標を20年に決定しました。米国もバイデン政権が農業の脱炭素化の方針を表明しており、中国も積極的です。
 21年は環境問題や生物多様性に関する国際会議がいくつも予定されており、9月には国連食料システムサミットが開かれます。農水省の政策転換はそうした動きを視野に入れ、日本の姿勢を明確にしておく必要があったためと考えられます。
 佐々木さん「50年に25%とは遠い先の目標に見えます」
 それでも相当に高いハードルと考えるべきです。有機農業が盛んな欧州などと違い、日本は農地に占める比率が18年時点で0・5%にとどまります。温暖で湿度の高い日本の気候のもとでは病害虫や雑草が発生しやすいからです。
 環境問題への関心が高い農家は1970年代ごろから有機農業に取り組んでいます。一部の研究者も栽培方法の研究などで応援してきました。にもかかわらず広い農地で効率的に有機農業ができる技術は確立していません。
 だからこそ農水省が本気になって後押しする意味があります。「みどりの戦略」は病害虫を早期に発見する技術や除草ロボット、病気に強い品種の開発などの課題を掲げています。それらを着実に達成し、生産者が経営のカジを切れるような環境を整えることが必要でしょう。
 阪上さん「消費者は状況をどう受け止めるべきですか」
 農薬や化学肥料を使わないと天候などの影響を受けやすく、作物の形や大きさは不ぞろいになりがちです。そうした規格外の作物を、通常より安く買おうとするのなら有機農業は広まりにくいでしょう。
 一方で値段があまりに高いと、消費者も手を出しにくいでしょう。有機農業は手間がかかるので、いかに価格を抑えるかは大きな課題です。
 そこで再び農水省の出番です。技術改良しても慣行農業の値段に近づけることができない場合、補助金で支援するのか。支援するなら、必要性を国民にどう説明するのか。農水省は大きな責務を負っています。
ちょっとウンチク
消費者の理解が不可欠
 有機農業の拡大に際して気をつける必要があるのは、作物の安全性を前面に出すべきではないという点だ。健康志向を理由に有機農産物を買っている消費者が少なくないが、農薬もルールに則して使えば安全性に問題はない。そこが混乱すると、慣行農業に対する不当な批判になりかねない。
 大切なのは地球環境の未来にとってどんな農業がふさわしいかだ。その点で、栽培面でハードルが高い有機農業だけでなく、農薬を使いながら量を減らす努力にも十分意義がある。消費者が安全・安心以外の価値をどう評価するかも、農水省の政策転換の行方を左右する。
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スマートネット山本
Admin: スマートネット山本
私は、IT・WEBデザインの会社を営んでいます。一般企業や個人の農業創業・開業のお手伝いを行う機会がふえたことで、農業創業コンサルが主たる業務になりました。全国で活動実績があり、野菜・果実・キノコ栽培のスタートアップ一式業務、行政申請、補助金申請、資金調達支援を行っています。個人では無農薬米の栽培とキノコ栽培を行っています。また天然植物ホルモン液を活用した農業技術指導者を擁しており、2021年より国連ECOSOC/NGO団体と提携し世界の農業振興・教育に携わっております。儲かる農業をテーマに、短期で黒字化になる農業をご案内しております。
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