施設園芸拡大
3/5 施設園芸が東北や北陸で導入加速
ビニールハウスなどの施設園芸は、愛知県、栃木県、南九州が盛んですが、だんだんと北上してきています。温暖化のせいでしょうか。寒い地方の冬場の暖房コストが、少し下がってきたのではとも思われます。新しく始める地域では、JAや近隣農家もおせっかいを焼かないので、立ち上げやすい利点があります。現在は、機械化、自動化を導入することで、オペレーティング技術と栽培管理を学ぶことで、比較的早く起動に乗れます。あとは、販路の開拓が重要です。
米の消費減が一段と進む中、東北や北陸の産地を中心に施設園芸を推奨する動きが進んでいる。ただ、失敗例は後を絶たない。成功のヒントを探るため、オランダ式のハウスで大玉トマトを作る東馬場農園(神戸市)にて
「10アールの売上げはならすと1600万円」。代表の東馬場怜司さんの言葉に驚いた。国内平均はビニールなどハウスの種類を問わなければ300万円だからだ。大玉トマトの栽培面積は50アール。全体の売上げは8000万円だ。これだけの数字をたたき出すには、収量と単価の両方で突出した成果を挙げないといけない。
収量に最も影響するのは光合成。その活性を左右する採光率や二酸化炭素(CO2)の濃度を調整するため、コンピューターでハウス内の保温や遮光のカーテンの開閉のほか、CO2の発生装置や加温機の稼働を制御している。ただし、それらの設定は自動化されていない。あくまで状況から判断して設定するのは人。だから人の育成に時間をかける。
ハウスを管理するのは責任者2人と従業員2人。いずれも社歴は数カ月~5年と若く、入社前に栽培の経験はない。そこで施設園芸の総合商社に長年勤めた東馬場さんは彼らと毎週会議を開く。議題は前の週の反省とそれを踏まえた次の週の計画の策定。収量や品質が落ちた原因などをともに考え、改善法を教え込む。
一方、単価を上げた要因の一つは中間流通を省いたことだ。スーパーに直接卸すことで、JAと市場を経由するとかかる手数料や運送費などを大幅に削ったから利益率も高い。
もう一つの要因は地産地消。一大消費地の京阪神にあって、とくに重視する商圏は農園から半径5kmである。遠近さまざまな店舗で販売した結果、とくに5km圏内での売れ行きが「まるで違った」という。そこで始めたのが主に近隣の住民を対象にした直売。農園のそばに中古のトレーラーを直売所代わりにしたところ、売上げが全体の1割を占めるまでになった。
東馬場さんが設立当初から理念に掲げてきたのは「人が来る農園」。人とは従業員としても消費者としても、である。事実、彼らが新たなパートや買い手を呼んでいる。経営の屋台骨には共感してくれる人たちの存在があることを最後に言い添えておきたい。
2020/03/05 日経産業新聞より抜粋