宮城県農業法人活躍
12/27 日経新聞 東北版より抜粋
宮城県東松島市野蒜(のびる)地区の農業法人アグリードなるせが、農地存続に向けスマート農業へかじを切っている。東日本大震災で市街地の65%が浸水した同市は離農する住民が増え、農地の集約と大規模化が進んだ。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」やドローン(小型無人機)などを活用。稼げる農業へ試行錯誤を重ねている。
12月中旬、収穫を終え2020年に向けて農地を耕す有人トラクターに無人自動運転トラクターが並走する。運転手は1人だが2倍の作業ができる。
アグリードなるせは3月、農林水産省のスマート農業加速化実証プロジェクトに選ばれ、整地から収穫まで一貫した実証実験を19年度に始めた。田畑の耕起に使う無人自動運転トラクター、田植えには直進キープ付き田植え機、肥料や農薬散布にドローン、収穫作業で自動走行コンバインが1台ずつ支給された。
作業に携わった社員は「スマート農業の実証だったけど、今年はあまりスマートではなかった」と振り返る。これらの農機を使うには農地に目印となる位置情報を割り振り、システムに登録する作業が必要。例年通りコメ、大豆、麦作りに加えて位置情報約140カ所を登録するなどの地道な「仕込み」に奔走した。
それでもスマート農業へかじを切ったのは、東日本大震災で被災した農家が離農し農地集約が進んだことが背景にある。
アグリードなるせの農地は震災前の倍となる約100ヘクタールに拡大し、土地の所有者は約140人になる。作物もコメと大豆に加え、麦も手掛けるようになった。震災のあった11年は2人で津波にあった農地の除塩を始めたが、今では20~70歳代の社員が14人に増えた。
一方で作業量が増え、土地管理も煩雑になるなか、限られた人手で営農を続ける必要がある。そのためには作業の効率化だけでなく、生産コストや採算を踏まえた持続可能な稼げる農業への脱皮が求められた。
生産管理システムを導入し、種や肥料、農薬の必要量の計算や計画を立てられるようにした。震災後に復興交付金でそろえた農機の更新期を迎えたところに、農水省の支援事業の話が転がり込んだ。
実証事業の対象農場は全国で約70あり、アグリードなるせは輸出に対応できる低コスト米の生産体制の実証を担う。宮城県や農業試験場、クボタなどとコンソーシアムを組み、20年度まで2年間の実証実験だ。スマート農業の導入でコメの生産コストを17年比25%削減し、60キログラムで7000円を目指す。
宮城県内では100ヘクタール以上の規模を持つ農業法人が18年に26社と15年比で倍以上となった。就農者も雇用される形態が過半数で、社会保障や福利厚生が義務付けられる農業法人に期待が高まっている。県のスマート農業の担当者は「かっこいい、稼げる、革新的な農業を広げ、若い世代の就農を促したい」と実証実験に期待を込める。
アグリードなるせでは収穫した麦やコメを原料にしたバウムクーヘンや地ビールなども販売している。コメや麦は農協に卸していたが、加工販売も手掛けることで品質へのこだわりも強くなったという。
10月に常務を退いた佐々木和彦さんは「農業だって新陳代謝が必要。20年、30年後を見据え、もがかなくちゃ」と話す。農地を残したいという思いが新しい農業を切り開いている。
12月中旬、収穫を終え2020年に向けて農地を耕す有人トラクターに無人自動運転トラクターが並走する。運転手は1人だが2倍の作業ができる。
アグリードなるせは3月、農林水産省のスマート農業加速化実証プロジェクトに選ばれ、整地から収穫まで一貫した実証実験を19年度に始めた。田畑の耕起に使う無人自動運転トラクター、田植えには直進キープ付き田植え機、肥料や農薬散布にドローン、収穫作業で自動走行コンバインが1台ずつ支給された。
作業に携わった社員は「スマート農業の実証だったけど、今年はあまりスマートではなかった」と振り返る。これらの農機を使うには農地に目印となる位置情報を割り振り、システムに登録する作業が必要。例年通りコメ、大豆、麦作りに加えて位置情報約140カ所を登録するなどの地道な「仕込み」に奔走した。
それでもスマート農業へかじを切ったのは、東日本大震災で被災した農家が離農し農地集約が進んだことが背景にある。
アグリードなるせの農地は震災前の倍となる約100ヘクタールに拡大し、土地の所有者は約140人になる。作物もコメと大豆に加え、麦も手掛けるようになった。震災のあった11年は2人で津波にあった農地の除塩を始めたが、今では20~70歳代の社員が14人に増えた。
一方で作業量が増え、土地管理も煩雑になるなか、限られた人手で営農を続ける必要がある。そのためには作業の効率化だけでなく、生産コストや採算を踏まえた持続可能な稼げる農業への脱皮が求められた。
生産管理システムを導入し、種や肥料、農薬の必要量の計算や計画を立てられるようにした。震災後に復興交付金でそろえた農機の更新期を迎えたところに、農水省の支援事業の話が転がり込んだ。
実証事業の対象農場は全国で約70あり、アグリードなるせは輸出に対応できる低コスト米の生産体制の実証を担う。宮城県や農業試験場、クボタなどとコンソーシアムを組み、20年度まで2年間の実証実験だ。スマート農業の導入でコメの生産コストを17年比25%削減し、60キログラムで7000円を目指す。
宮城県内では100ヘクタール以上の規模を持つ農業法人が18年に26社と15年比で倍以上となった。就農者も雇用される形態が過半数で、社会保障や福利厚生が義務付けられる農業法人に期待が高まっている。県のスマート農業の担当者は「かっこいい、稼げる、革新的な農業を広げ、若い世代の就農を促したい」と実証実験に期待を込める。
アグリードなるせでは収穫した麦やコメを原料にしたバウムクーヘンや地ビールなども販売している。コメや麦は農協に卸していたが、加工販売も手掛けることで品質へのこだわりも強くなったという。
10月に常務を退いた佐々木和彦さんは「農業だって新陳代謝が必要。20年、30年後を見据え、もがかなくちゃ」と話す。農地を残したいという思いが新しい農業を切り開いている。