漢方薬が米国・中国に
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漢方大手のツムラは、米国および中国で、漢方のシェアを伸ばす計画です。
国内の医療制度の資金不足もあり、攻めでは「予防医学」守りでは「保険料外し」の対策があるようです。漢方は、医療保険が適用される一部の製品が、一派に量としてドラッグストアや薬局で買えるため、ときどき政府で論議されているためです。
漢方薬の国内最大手、ツムラが「本場」中国へ本格進出する。2017年に資本業務提携した中国4大保険会社の一角である平安保険集団(本社・深セン市)、従来から生薬(しょうやく)原料の調達先だった天津盛実百草中薬科技(本社・天津市)とそれぞれ合弁会社の「平安津村」、「津村盛実製薬」の設立を発表した。2月に行われた会見でツムラの加藤照和社長は、27年に中国事業で100億元(約1726億円)の売り上げを目指すと明かし、中国事業を「日本の売上高と同等規模以上」にすると宣言した。5月の決算発表時には平安津村を6月中旬に設立見込みであることを明らかにしている。
動植物を由来とする生薬を複数組み合わせて構成される漢方薬は、奈良時代以降に伝来した中国の伝統医学「中医学」での生薬由来の処方薬をベースに江戸時代以降、日本独自の考え方なども織り込んで発展してきた。中医学で使用される処方薬は総称して「中薬」と呼ばれ、漢方薬と同じ処方薬もあるものの、完全に同一ではない。
16年時点の中国の中薬市場は日本円換算で15兆円弱と巨大だ。現在の中国は日本同様に少子高齢化が進み、経済成長による所得拡大で生活習慣病患者も増加している。そのような状況下で、いわゆる西洋薬の需要が伸長しているのと同様に、従来からなじみのある中薬市場も成長し続けている。
この中薬市場に「追い風」になったのが生薬から熱帯感染症のマラリアに有効な成分を抽出した中医科学院の屠(ト)ユウユウ氏が15年にノーベル医学生理学賞を受賞したことだ。
中薬市場の急成長に対し、中国政府は17年7月、中薬の安全性・品質向上に関する初めての法律「中薬法」を制定し、品質の向上に躍起になっている。
6/20の日経新聞より
医療用漢方最大手のツムラが米国で漢方の臨床試験(治験)に挑んでいる。このほど駒を一つ進め、実際に患者に投与して効果を確認する「第2層後期」に入ることが決まった。米国では漢方が医薬品として販売されておらず、承認取得は長年の悲願だ。ただ背景には米国での実績をてこに、むしろ日本での漢方の地位向上を目指す狙いもありそうだ。
「一番得意なところから攻める」。ツムラの国際開発本部長、高崎隆次常務執行役員は話す。
米国で治験を進めているのは漢方製剤「大建中湯(だいけんちゅうとう)」だ。適応症はこのほど「術後イレウス(腸閉塞)」に絞った。詳細なデータを集め、米食品医薬品局(FDA)への申請につなげる考えだ。
大建中湯は、これまで米国での治験の「第2層前期」を3つの適応症について実施。腸閉塞のほかに「過敏性腸症候群」と「クローン病」でも治験を進めていた。
適応症を絞るにあたり、試験結果の分析や、日米の医師の意見を参考にした。手術後の腸閉塞に対する効果的な治療法を求める声は多い。腸閉塞の解決は入院期間の短縮や合併症の軽減にもつながるため、ニーズが高いと考えた。
クローン病では現在、分子標的薬の臨床試験が活発なため、治験に協力してくれる患者の確保が難しく、十分なデータを集めるには費用が膨らむという課題もあったようだ。また、過敏性腸症候群についてはFDAが認める有効性の評価基準が合わなかったという。
漢方は複数の生薬を調合して製造する多成分の複合製剤だ。個々の生薬が多くの成分を含む上に、それらが組み合わさっている。どの成分がどういう作用を引き起こしているのかを特定することが難しい。そのため米国では医薬品として承認されたケースはない。中国企業も承認を目指しているが、取得はまだだ。
ツムラが米国での承認取得に向けて本格的に動き出したのは2004年。「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」という女性の更年期障害向けの漢方からスタートした。翌年には対象を大建中湯にも拡大した。
大建中湯は当初12年の米国発売を目指していたが、延期された。また、桂枝茯苓丸は治験の長期化で費用負担が大きくなり、計画を中止した。前例がなく、一筋縄ではいかなかったためだ。
ただしツムラが米国での承認取得を目指す理由は、市場開拓だけではない。実は「日本国内での漢方に対する信頼を高める」という目的も大きい。日本では医薬品として認められているが、処方薬全体に占める漢方薬のシェアは薬価ベースで約1・4%にすぎない。
漢方薬の処方をためらう医師もいる。漢方医学の知識を持つ医師の育成なども大きな課題だ。ツムラはFDAのお墨付きを得ることで、国内の医療現場での漢方薬の処方に、はずみを付けたい考えだ。(桜井豪)
【表】米国で漢方の承認取得を地道に進めてきた
2005年度 「大建中湯」の臨床試験に向け、米FDAに申請
14年度 効果を確認する第2層前期の治験を開始
17年度 第2層前期の治験を終了
18年度以 降 ターゲットを「術後イレウス」に絞り、第2層後期へ
医療用漢方最大手のツムラが米国で漢方の臨床試験(治験)に挑んでいる。このほど駒を一つ進め、実際に患者に投与して効果を確認する「第2層後期」に入ることが決まった。米国では漢方が医薬品として販売されておらず、承認取得は長年の悲願だ。ただ背景には米国での実績をてこに、むしろ日本での漢方の地位向上を目指す狙いもありそうだ。
「一番得意なところから攻める」。ツムラの国際開発本部長、高崎隆次常務執行役員は話す。
米国で治験を進めているのは漢方製剤「大建中湯(だいけんちゅうとう)」だ。適応症はこのほど「術後イレウス(腸閉塞)」に絞った。詳細なデータを集め、米食品医薬品局(FDA)への申請につなげる考えだ。
大建中湯は、これまで米国での治験の「第2層前期」を3つの適応症について実施。腸閉塞のほかに「過敏性腸症候群」と「クローン病」でも治験を進めていた。
適応症を絞るにあたり、試験結果の分析や、日米の医師の意見を参考にした。手術後の腸閉塞に対する効果的な治療法を求める声は多い。腸閉塞の解決は入院期間の短縮や合併症の軽減にもつながるため、ニーズが高いと考えた。
クローン病では現在、分子標的薬の臨床試験が活発なため、治験に協力してくれる患者の確保が難しく、十分なデータを集めるには費用が膨らむという課題もあったようだ。また、過敏性腸症候群についてはFDAが認める有効性の評価基準が合わなかったという。
漢方は複数の生薬を調合して製造する多成分の複合製剤だ。個々の生薬が多くの成分を含む上に、それらが組み合わさっている。どの成分がどういう作用を引き起こしているのかを特定することが難しい。そのため米国では医薬品として承認されたケースはない。中国企業も承認を目指しているが、取得はまだだ。
ツムラが米国での承認取得に向けて本格的に動き出したのは2004年。「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」という女性の更年期障害向けの漢方からスタートした。翌年には対象を大建中湯にも拡大した。
大建中湯は当初12年の米国発売を目指していたが、延期された。また、桂枝茯苓丸は治験の長期化で費用負担が大きくなり、計画を中止した。前例がなく、一筋縄ではいかなかったためだ。
ただしツムラが米国での承認取得を目指す理由は、市場開拓だけではない。実は「日本国内での漢方に対する信頼を高める」という目的も大きい。日本では医薬品として認められているが、処方薬全体に占める漢方薬のシェアは薬価ベースで約1・4%にすぎない。
漢方薬の処方をためらう医師もいる。漢方医学の知識を持つ医師の育成なども大きな課題だ。ツムラはFDAのお墨付きを得ることで、国内の医療現場での漢方薬の処方に、はずみを付けたい考えだ。(桜井豪)
【表】米国で漢方の承認取得を地道に進めてきた
2005年度 「大建中湯」の臨床試験に向け、米FDAに申請
14年度 効果を確認する第2層前期の治験を開始
17年度 第2層前期の治験を終了
18年度以 降 ターゲットを「術後イレウス」に絞り、第2層後期へ