銀行の農業3行
3/26
九州では、銀行が農業に参入しています。出資形式でなく、銀行が農業法人を立ち上げ、生産・流通に携わっています。本日の日経新聞では、鹿児島銀行、宮崎銀行、佐賀銀行の記事がありました。
・鹿児島銀行は、2016年に農業生産法人春一番を立ち上げ、銀行員(出向)が昨年から玉ねぎなどの収穫を行っています。銀行が直接農業経営するのは、全国で初めての試みでした。
・宮崎銀行と佐賀銀行も、出資形式で地域の農業生産流通、6次化にかかわっています。
●これまで、鹿児島、宮崎、佐賀は、特にJAの力が強く、農業者も強く依存していた地域です。しかしその分、農業者の利益は、いろいろなところで削られ、畜産に至っては融資の利払いが多大なものになっていました。まだ、小さな試みですが、これらの地域の農産物の生産と流通・6次産業化の構築に一役買って、よいモデルケースになれば、いいかなと思っています。
3/26 日本経済新聞 地方経済面九州 より抜粋
3月1日。鹿児島県日置市にある畑で作業服姿の男性らがタマネギを黙々と収穫していた。鹿児島銀行などが出資し2016年に設立した農業法人、春一番の社員だ。同社は吉満隆裕社長をはじめ4人の全社員が鹿児島銀からの出向者。畑違いの仕事に日々向き合う。
圃場は0・8ヘクタールと当初の約2・7倍に広がった。育てる野菜への評価も高いが初年度売り上げはタマネギ約80万円、オクラ約30万円だ。今後は県内で栽培例が少ないパプリカをビニールハウスで実証栽培。「IT(情報技術)も活用して効率的な農業のノウハウを蓄積し銀行の取引先に広めたい」と吉満社長は言う。
鹿児島銀が殖産
国内での農業生産工程の安全認証「JGAP」取得も目指す。吉満社長ら3人が指導員の資格を持ち、鹿児島銀の取引先の認証取得を後押しすることも視野に入れる。
鹿児島銀は1次産業を融資面で支えてきた。農業金融に着手したのは1997年だ。牛などを担保にするABL(動産担保融資)も取り扱い、管理システム「AgriPro」を10年に稼働させた。肉製品製造や酒類製造、製茶、畜産、養鶏、農業を「アグリクラスター関連業種」と規定。貸出金残高は17年9月末で935億円と07年9月期比で65%増え、建設業を上回る。東京商工リサーチの調査では15年9月期で鹿児島銀の農業・林業向け貸出金残高は全国115行中で3位。貸出比率は最高だった。
明治政府は殖産興業を推進しようと米国にならって「国立銀行条例」を1872年に制定した。鹿児島銀は第百四十七国立銀行が源流で19年が創業140年。「1次産業は南九州の基幹産業で成長産業。時間的に余裕がある我々が稼げる産業にして雇用創出につなげたい」。上村基宏頭取は前のめりの姿勢で話す。
格好いい農業に
宮崎銀行も農業でもうける仕組みを自ら体得しようとしている。宮崎空港から車で約30分。真新しいビニールハウスが視界に入る。同行グループの農業法人、夢逢いファームが17年に立ち上げたアボカド農場だ。3月14日に訪れると112本の苗木が高さ1メートルほどに育っていた。「実を付けるのは2~3年後」と同行から出向した緒方省吾農場長が説明してくれた。
国内で流通するアボカドはメキシコなど中米産が目立つ。国内での栽培実績が少ない品種に宮崎銀が挑む背景には、農家の高齢化で進む耕作放棄地の問題がある。「格好がよくて稼げる農業があることを示せなければ若い世代は参入しない」と夢逢いファームに栽培指導している横山果樹園の横山洋一代表は語る。
横山氏は数少ないアボカド農家の一人で7年前に栽培の研究を開始。同氏のアボカドは市場で1個5千円で取引されたこともある。「横山氏が開いた可能性を雇用につなげるには自らリスクを取るべきだ」と宮崎銀は判断。「出荷体制を築くまでは銀行にお願いしてでもやり抜きたい」。緒方氏も覚悟を決めている。
JAバンクなどが圧倒的に強いという佐賀県で取引先の販路開拓や6次化に力点を置き「選ばれる金融機関」を目指すのが佐賀銀行だ。例えば昨年11月に東京都内であったご当地食品の商談会。佐賀銀が集めた出展者数は41と、参加した55地銀の中で最も多かった。
吉野ケ里歴史公園近くで17年に開業した農産物直売所の運営会社にはファンド経由で1千万円を出した。「年80万人の観光客の受け皿となる商業施設がない」との相談がきっかけだ。地元産のコメや麦を使うレストランなどを併設し、にぎわいをみせる。一方で「6次化は黒字化に4年は必要」(営業支援部)。投融資を収益につなげる忍耐も問われる。(おわり)
【図・写真】収穫したタマネギをトラックに積み込む春一番の吉満社長。前職は銀行の支店長だった(鹿児島県日置市)
圃場は0・8ヘクタールと当初の約2・7倍に広がった。育てる野菜への評価も高いが初年度売り上げはタマネギ約80万円、オクラ約30万円だ。今後は県内で栽培例が少ないパプリカをビニールハウスで実証栽培。「IT(情報技術)も活用して効率的な農業のノウハウを蓄積し銀行の取引先に広めたい」と吉満社長は言う。
鹿児島銀が殖産
国内での農業生産工程の安全認証「JGAP」取得も目指す。吉満社長ら3人が指導員の資格を持ち、鹿児島銀の取引先の認証取得を後押しすることも視野に入れる。
鹿児島銀は1次産業を融資面で支えてきた。農業金融に着手したのは1997年だ。牛などを担保にするABL(動産担保融資)も取り扱い、管理システム「AgriPro」を10年に稼働させた。肉製品製造や酒類製造、製茶、畜産、養鶏、農業を「アグリクラスター関連業種」と規定。貸出金残高は17年9月末で935億円と07年9月期比で65%増え、建設業を上回る。東京商工リサーチの調査では15年9月期で鹿児島銀の農業・林業向け貸出金残高は全国115行中で3位。貸出比率は最高だった。
明治政府は殖産興業を推進しようと米国にならって「国立銀行条例」を1872年に制定した。鹿児島銀は第百四十七国立銀行が源流で19年が創業140年。「1次産業は南九州の基幹産業で成長産業。時間的に余裕がある我々が稼げる産業にして雇用創出につなげたい」。上村基宏頭取は前のめりの姿勢で話す。
格好いい農業に
宮崎銀行も農業でもうける仕組みを自ら体得しようとしている。宮崎空港から車で約30分。真新しいビニールハウスが視界に入る。同行グループの農業法人、夢逢いファームが17年に立ち上げたアボカド農場だ。3月14日に訪れると112本の苗木が高さ1メートルほどに育っていた。「実を付けるのは2~3年後」と同行から出向した緒方省吾農場長が説明してくれた。
国内で流通するアボカドはメキシコなど中米産が目立つ。国内での栽培実績が少ない品種に宮崎銀が挑む背景には、農家の高齢化で進む耕作放棄地の問題がある。「格好がよくて稼げる農業があることを示せなければ若い世代は参入しない」と夢逢いファームに栽培指導している横山果樹園の横山洋一代表は語る。
横山氏は数少ないアボカド農家の一人で7年前に栽培の研究を開始。同氏のアボカドは市場で1個5千円で取引されたこともある。「横山氏が開いた可能性を雇用につなげるには自らリスクを取るべきだ」と宮崎銀は判断。「出荷体制を築くまでは銀行にお願いしてでもやり抜きたい」。緒方氏も覚悟を決めている。
JAバンクなどが圧倒的に強いという佐賀県で取引先の販路開拓や6次化に力点を置き「選ばれる金融機関」を目指すのが佐賀銀行だ。例えば昨年11月に東京都内であったご当地食品の商談会。佐賀銀が集めた出展者数は41と、参加した55地銀の中で最も多かった。
吉野ケ里歴史公園近くで17年に開業した農産物直売所の運営会社にはファンド経由で1千万円を出した。「年80万人の観光客の受け皿となる商業施設がない」との相談がきっかけだ。地元産のコメや麦を使うレストランなどを併設し、にぎわいをみせる。一方で「6次化は黒字化に4年は必要」(営業支援部)。投融資を収益につなげる忍耐も問われる。(おわり)
【図・写真】収穫したタマネギをトラックに積み込む春一番の吉満社長。前職は銀行の支店長だった(鹿児島県日置市)